第1章 三角形 case1
合宿当日。
午前中から梟谷グループに属してる学校の人達が来るそうで、朝から体育館の準備やら買い出しやらに追われてた。
買い物が終わって体育館に戻った時にはすでに練習試合は始まってて…。
丁度良く、京ちゃんがツーアタックでセットを取った所だった。
なんか、生き生きしてて格好良くみえる。
「京ちゃん、ナイス!」
ハイタッチをするように片手を上げて声援を送る。
「…さくら。」
私の名前を小さく呼んでこちらに向かってきた京ちゃんは、軽くタッチしてくれてから、ベンチに腰を下ろした。
すぐにタオルを用意して渡す。
他の部員にも同様にタオルを配っていた時、京ちゃんのいた方から声が聞こえた。
「京ちゃーん。何?彼女?」
私の言葉を真似たのか高めの、からかうような、少し悪意を感じる声。
さっきまで試合をしていた相手が、京ちゃんの隣に座ってニヤニヤと私を見ている。
困ってるのか、怒ってるのか、答えない京ちゃん。
「幼馴染みなんですよ。京ちゃん、兄妹みたいなものなので。恋愛感情とか、そんなのお互いにありませんよ。ねぇ、京ちゃん?」
返答しない事であらぬ噂をたてられたら迷惑だと、二人の前できっぱりと否定を口にした。
同意を求めるように京ちゃんに顔を向けるが何故か黙ったままで、少し心配になった。
「へぇ…。そういう事ね。苦労するねぇ、京ちゃん。」
納得したのか、してないのか、微妙な声だけを残してその人はすぐにチームメイトの元に戻っていった。