第1章 三角形 case1
私は京ちゃんと同じ高校に進学した。
部活は勿論、京ちゃんのいる男子バレーボール部のマネージャー。
兄妹にしてはくっつき過ぎかも知れないけど、知り合いがいる場所の方が落ち着く訳で。
特にやりたい部活がある訳でもないし、中学生の時からマネージャーやってたから経験もあるし。
そんな軽い気持ちで、マネージャーとして入部した男子バレーボール部は…。
全国クラスだった。
当然、部員は多い。
マネージャーとしての仕事も多い。
おまけに新入生が入ったばかりなのに、週末には合宿と練習試合があるなんて…。
「流石強豪だわ…。」
部活が終わった帰り道、思った事がつい口から零れた。
「…お疲れ。」
小さな呟きを拾って、隣を歩く京ちゃんの声が降ってくる。
すぐ後に、頬に冷たい感触が触れた。
「ひゃっ…!」
驚いて声を出し、冷たい物の正体を探ろうと手を頬の位置まで上げた。
その手に触れたのは私の好きなジュース。
きっと、私の為に用意してくれていた物だ。
「有難う、京ちゃん。」
喜んで受け取ろうと手を出すと、ペットボトルの蓋を開けてから渡してくれた。
「…なんか、京ちゃんと二人きりだと立場逆だよね。京ちゃん、私のマネージャーみたいだもん。」
貰った物に口を付けて一口飲んでから、ふざけた事を言う。
京ちゃんと私は昔からこうだ。
私にはとことん甘い京ちゃん。
たまに面倒臭そうなのが顔に出るけど、結局は私の世話を焼いてくれていた。
「…ね、そう言えば週末の練習試合って何処の学校が来るの?」
漫才したい訳じゃないから、ふざけた事を言ってても、ノリとか突っ込みとか期待してない。
反応を待たないで、ふと気になった事を問い掛けた。
こんな感じで、私がどんどん話題を変えて話し掛けて、京ちゃんが答える。
他愛もない会話をしながら、家まで送って貰った。
「さくら、お休み。」
「お休みなさい、京ちゃん。」
片手を上げて挨拶をし、玄関前から家路に着く後ろ姿を見送る。
この平和な日常が、ずっと続くと思っていた。