第7章 三角形 case4
二口から離れて数分。
後ろを振り返っても姿が見えない所まで来て、腰に回っていた手が離れる。
「さて、放課後だからあんまり時間ないけど、どこか行きたい所ある?」
及川さんは完全にデートのつもりなようで、声を掛けてきた。
ここで流されて、ただのデートは出来ない。
私が後輩である事を知っていた理由を、先に知りたい。
でなければ、そればかり気になってしまいそうだ。
「いや、あの。デートを開始する前に、私、聞きたい事が…」
勇気を出して、話を断つような言葉を出した。
途端に、及川さんの笑顔が冷たくなった気がする。
そんなに、話を変えようとしたのが気に入らなかったのかな。
「じゃあ、ゆっくりお喋り出来る所でも行こうか。この辺り、カフェとかある?」
不安になっていたけど、その顔のまま、返事があった。
「ありますよ。近くのケーキ屋さんに、イートインのコーナーがあって。お茶も出来るので、そこで良いですか?」
冷たい感じがするのは、気の所為だと思う事にして、会話を続ける。
「いいよ。案内してくれる?」
了解が取れたから、先を歩き始めた。
すぐに横に並ばれて、自然な感じで手を握られる。
ここには、見せ付ける相手もいないのに、なんで?
なんて、疑問も過ったけど、こんな事に耐性が無いせいで、少しドキドキしてしまって手が離せなかった。