第7章 三角形 case4
及川さんがサラッと流して、すぐに会話が終わってくれる事を祈る。
いや、会話をされたら、彼女がどうの、とか言われる。
そんな事をされたら、明日には、釣り合わないだの、身の程知らずだの、嫌味のバリエーションが増えるだけだ。
でも、このまま会話を聞いてるだけだろうと、私が出ていこうと、その結果は同じ。
寧ろ、今なら及川さんが言い返してくれるかも知れない。
緊張で動きにくい足を、なんとか進める。
「なんでって、彼女と待ち合わせだけど?」
「うちに、モテる及川さんと釣り合う女なんか居なくないですか?」
会話が聞こえてくる。
相変わらず二口は嫌味っぽい言い回ししか、しない男だ。
年上相手にまで、その徹底した態度には尊敬すらしたけど、
「つーか、どこで知り合ったんです?うちと青城って遠いし、接点無くないすか?」
すぐに撤回した。
こんな困る質問してくる人、尊敬なんか出来ない。
友人ならともかくとして、他校の先輩相手に馴れ初めなんか普通聞かないでしょ。
嫌味を徹底し過ぎて、ただの空気が読めない人にしか見えなくなってきた。
しかも、私達のお付き合いは仮のものな訳で。
こうやって、私の周りの人と接触する事は想定してない。
だから、出会いとか、どこが良いのかとか、そういう細かい設定はしていなかった。