第7章 三角形 case4
放課後、本日最後の授業が終わって教室を出る。
そこで、先生に呼び止められた。
約束がある日に限って、用事を頼まれたりする事は、よくある話。
相手が先生だけに無視は出来ず、話を聞く事にした。
まぁ、単なる世間話というか、最近は私が一人で行動している事を心配されていただけで。
数分で話も終わり、解放される。
でも、この数分が問題だった。
私の少しだけ前に昇降口から出た男、二口が前を歩いている。
あの数分さえ無かったら、鉢合わせずに済んだのに。
今から追い抜いて、先に及川さんと合流出来ても、絶対に姿を見られる。
自分の運の悪さを恨んだ。
ただ二口と帰りが被りたくないだけなら、校舎に戻って時間を潰せば良いけど、待ち合わせをしているからには、そういう訳にもいかない。
連絡を取っていた時、見ていたから、他校生がいたら私の彼氏だと分かる。
知り合いでも無い人に、いきなり嫌味とか言ったりはしないだろうけど、何か心に引っ掛かっていた。
大切な事を忘れている気がする。
「あっれー?及川さんじゃないですか。こんなトコになんで居るんすかー?」
先に校門まで辿り着いた二口の声が聞こえてくる。
ここで、私は思い出した。
二口も、及川さんも、バレーボール部という共通点がある事を。
そして、幸か不幸か、互いに強豪であるが故に顔見知りの可能性がある事を。
そして、そうだった事を示す声を聞いて対処法を考えられず、立ち止まってしまった。