第7章 三角形 case4
こうして、彼氏持ちのフリをする事になった私だけど。
実際の交際経験は0だから、何をすれば良いのか分からないまま、その日は電話番号だけ交換して帰った。
及川さんは、普通に恋人が居る風を装えば良いって言っていたけど、他校生だから学校で何か出来る訳がない。
彼氏が出来たから構わないでくれ、なんて。
口で言って回る事でもなかった。
結局は、いつもと変わらぬまま日常を過ごしていると、休み時間に男子に話し掛けられてしまった。
彼氏に悪いからって、雑談まで断るのも、何か違う。
どうすれば良いのか迷っていると、スマホにメッセージが入った。
【おはよう】
【朝練あったから、連絡出来なくてゴメンね】
【こっちは休み時間だよ。さくらちゃんは授業中かな?】
わざわざ何回かに分けられた文と、合間合間にスタンプ。
連続で送られてくるそれは、勿論及川さんからで。
【おはようございます。こっちも休み時間ですよ】
こちらは、一回の返事でメッセージを返す。
返信完了を示すようにスマホを机に伏せると、近くに居た男子に友達かを聞かれた。
これは、チャンスだ。
聞かれたから、答えるだけ。
言って回るのとは違う。
「彼氏だよ。別の学校だから、休み時間に連絡くれたの。」
不自然にならないように、ニコッと笑って幸せそうな素振りをする。
それを聞いて、生返事をした男子は去っていった。