第7章 三角形 case4
及川さんの方にも何らかの思惑があって、利害が一致するのなら、この話はイイ提案だけど。
何でも、タダより高いものはない。
私の現状を変える為だと言ってても、他に理由がないとは限らないし、
もし、その為だけだとしても、最後まで見返りを求めてこないとは思えない。
及川さんは、考えるような間を空けて、
「…メリットはないけど、興味が、あるんだよね。この俺を目の前にして、俺より魅力的って言われる男が居る訳ないって思わない?
居るんだったら、ソイツを見てみたいからかな。」
相変わらずの、自己愛が強い発言をしてきた。
「いや、それって付き合ったフリをしてまで見るものじゃ…」
「それに、」
思わず出た突っ込みが遮られる。
「あんなにはっきり、俺の事ディスりにきたコなんか初めてだったよ。
だから、君にも興味がある。その君の事を知ってみたい。それがメリットと言えば、メリットになるんじゃない?」
続いた言葉に付属する視線からは、嘘や冗談を感じなかった。
告白のようにも聞こえるけど、ヘラヘラと笑ってウヤムヤにされてしまうより、こっちの方が信用出来る気がして、手を差し出す。
「カップル成立って事で良いよね?」
それだけで意味は伝わったようで、手が握られた。