第7章 三角形 case4
聞く相手を間違えていた。
生粋の人気者は、特定の相手が出来ても人気者である。
一方、私は…。
男子が圧倒的に多い環境の中で、女である事だけがチヤホヤされる理由。
それは下心があるからだ。
特定の相手が出来てしまえば、周りの人間が離れてしまうのだ。
思わせ振りな八方美人として、離れるどころか嫌われる可能性すらある。
私とは、基本の条件が違うから、何の参考にもならない話が終わったんだけど。
何故か、帰らせてくれない。
振り返って、引き留めた意図を問おうと首を傾けた。
「…何で、俺に会いに来たの?」
「…え?」
「さっきの、意味が分からない質問しに来ただけじゃないでしょ?」
人の心を見透かしたような言葉。
八方美人な人間が、特別気になる人が出来た時の対処法を知りたかった。
でも、条件が違う及川さんの話じゃ参考にならなかった。
つまり、対処法は分からないまま。
目的は達成出来ていない。
そこを見抜いたんだろうけど、これ以上及川さんの意見を聞いたって、意味がないと思った。
でも、自分から勝手に参考になると思い込んで会いに来て。
アテが外れたからって、それを口に出すのは失礼すぎる。
「もしかして、遠回しな告白だったのかな?及川さんの好きな人になりたいーって。」
「違いますっ!」
返答に迷っている内に、ポジティブ過ぎる勘違いをされて、反射的に否定だけを返した。