第7章 三角形 case4
手が離れていく。
でも、否定にショックを受けている感じはしないし…
「この及川さんの魅力が分からないコが居るなんて!あ、もしかして照れ隠しかな?」
ウザさを増したナルシストっぷりを披露してくれる有り様なので、謝る必要は無さそうだ。
「いくら魅力的でも、女の子の誰もが及川さんを好きになる訳じゃないですよ。」
この人には、何を言っても平気な感じがした。
許してくれる、ってより、ポジティブ過ぎて気にしない感じ。
「そりゃ、女の子の全てが及川さんの虜になっちゃったら人類滅亡しちゃうでしょ。」
思った通り、明るく受け止めてくれた上に、冗談まで披露してくれた。
「じゃあ、私は人類滅亡の危機を救う女とかになっちゃいますかね?及川さんより魅力的に見える人が居ますから。」
お陰で、ちょっとだけ気が抜けたみたいでノリを合わせた冗談を返す。
その途端、及川さんが笑った。
「だから、俺のトコに来たんだ?恋愛経験豊富な及川さんのアドバイスが欲しいの?」
確信を含んだ言葉が聞こえてくる。
口を滑らせてしまった事に気付いても遅かった。
「あ、えっと…その通りです。ファンじゃなくて、ごめんなさい。」
言い訳なんか思い浮かばず、肯定して謝るしか出来ない。
流石に機嫌を損ねたかと思ったんだけど…。
「女の子に頼られるなら大歓迎だよ。ほら、及川さんに何でも聞いてごらん?」
寧ろ、楽しそうな顔で胸を張っていた。