第7章 三角形 case4
‐及川side‐
俺に会いに来たって言うなら、出待ちのファンだと思うのって当然じゃない?
なのに、このコの口から出たのは…。
「及川さんは、いつも女の子に囲まれてて、誰にでもイイ顔してますよね。八方美人と言うか…。」
いきなりの悪口。
でも、それですぐにムキになって返すのは、イイ男がする事じゃないよね。
ただディスりに来ただけって感じもしないし、ちょっと様子見、かな。
伊達工からのスパイって線が消えてないのもあるし。
「そんな風にしてると、好きな人とか出来た時、困りませんか?」
聞いてみても、このコの真意は読めなかった。
分かったのは、スパイじゃないって事だけ。
この話は、恋愛の話なんだけど、告白とは違って。
純粋に、俺の意見が聞きたいだけって感じだ。
「別に俺は困った事なんてないよ。好きなコが居ても、彼女が出来ても、応援してくれるのがファンでしょ?」
求めてるのが、チームとか選手の調子とかじゃないなら、正直に答えてあげて当然。
これで、女の子を満足させてあげられるなら安いもんだよ。
そう思ったのに…。
「…そう、ですか。有難うございました。
引き留めてすみません。帰りますね。」
彼女は満足するどころか、落ち込んだ顔をして背中を向ける。
何があったのかも、
俺の答えの何が駄目だったのかも、
分からないけど。
こんな顔をさせて帰すなんて出来なくて。
咄嗟に手を掴んで引き留めていた。