第6章 ※‐case3‐ending.※
前に、私が受け取ったのはプロポーズ用の指輪。
確か、今時の女性は、婚約指輪を選びたい人が多いから、そういうのがあるって秋紀に聞いた。
それなら、私が選んだ指輪は、婚約指輪のつもりだろうと思う。
鎖から外されて、秋紀の手のひらに乗せられた輪っかが差し出された。
「…コレ。さくらのモンだから、渡したくて。」
この言葉は、プロポーズと思っていいんだろうか。
分からなくて、手が出せなかった。
「嫌なら、お前の手で捨てて。
だが、さっき灰羽に言った言葉…好きな人がいるっての、俺が期待していいってんなら、さ…。
左手に、着けさせて?」
話を聞いて、すぐに左手を秋紀に差し出した。
言葉で答えるよりも先に、体が勝手に応えている。
「さくら、俺と結婚してくれるか?」
「はい。喜んで。」
即答で口から出た返事。
私は、秋紀と結婚したいのだと、ちゃんと分かったから、もう迷いは無かった。
秋紀によって、左手の薬指に通された指輪。
嬉しそうに、その部分を撫でる指先の動きが擽ったくて、咄嗟に手を引く。
「なーに?感じちゃった?…仲直りエッチ、するか?」
ここまでの、甘い空気を吹き飛ばすような、厭らしい笑顔と声。
それを拒否する理由は、もう無くなっていた。