第6章 ※‐case3‐ending.※
頷いて、手を引く。
きっと、こんな場所でするような話じゃない。
秋紀も分かってくれたみたいで、黙ってついてきてくれた。
手は繋いだまま、自宅に戻る。
「…た、お邪魔、します。」
何かを言い掛けて、言葉を正す秋紀。
ただいま、と言って良いか迷ったんだろうな。
それは、これからの話で決まる事だろうから、今は突っ込まないでおく。
リビングに入って、向き合って座った。
でも、2人して黙ったまま。
ただ時間だけが流れていく。
いくら待っても、話は始まらなさそうだ。
このままじゃ、下手をしたら、秋紀が帰れない時間になってしまうかも知れない。
「…あのさ、話って?」
震える唇で、口火を切った。
秋紀の手が動く。
ネクタイを緩めて、ワイシャツのボタンを外した。
「なんで、脱ぐの?」
仲直りエッチのパターンだったら、今は受け入れる訳にはいかない。
秋紀の気持ちも分からないのに、ヤってたまるか。
「脱いでんじゃねぇよ。」
逃げるように身体を少し引いたけど、そのつもりじゃ無かったみたいで。
寛げたシャツの隙間から差し込まれた指先。
それに掛かけられた細い鎖が引かれる。
秋紀の胸元から、現れたのは、私が選んだ指輪だった。