第6章 ※‐case3‐ending.※
周囲の視線が私に向いている。
この状況の中には、流石に居られなくて、さっさと会計を済ませて店を出た。
私って、無い物ねだりばかりで、婚期を逃す女だったんだな、なんて。
今更どうしようもない事を考えながら、家路を急ぐ。
新しい彼女らしき人と一緒に居た秋紀。
もう戻れる筈がないって分かっているから泣きそうで。
早く家に帰りたいだけだったのに。
「コラ、そんな早く歩くな。追い掛けんの、大変だっただろうが。」
後ろから、まさかの人の声が聞こえた。
引き留めるように、握られた手が熱い。
「…秋紀、彼女は?なんで、追い掛けて来たの?」
振り返るのは怖くて、質問だけを送った。
「彼女じゃねぇよ。アレ、ダチの嫁。俺が最近落ち込んでたから、美味い飯食わせてやるーって。
因みに、あの店のマスターが旦那な。」
「…マジ?」
「マジマジ。嘘だと思ってんなら、今から確認しに戻るか?」
「それは嫌。」
「ま、あんな悪目立ちした後じゃ、そうだな。」
流れるような会話は、すでに終わった関係とは思えない程で、気が緩む。
だから、振り返って顔を向ける。
「…さくらと、話がしたい。少しでいいから、時間くれね?」
秋紀は、目が合った瞬間に、真剣な顔で声を落としてきた。