第6章 ※‐case3‐ending.※
顔を見てはいけない。
囚われてしまうから。
私は、とにかく、この男…リエーフの目に弱かった。
逃げようと、無言のまま立ち上がり、席から離れる。
リエーフは、当たり前のようについてくる。
「なぁ、ドコ行く?さくらが決めていいからな。」
当人は、これがデートの開始だと思ったようで。
デートする気はないと言う為に、振り返った。
見えてしまう顔。
合ってしまう眼。
その瞬間に、またこの瞳に捕まった。
言おうと思っていた否定は出ない。
そのまま無言でいると、手を掴まれた。
「俺は、さくらと一緒にいれるなら、ドコだって楽しい自信あるぞ。」
言葉を体現するような満面の笑み。
胸の奥がキュゥっと締め付けられて、罪悪感が頭を占めた。
このまま、秋紀と別れないまま、リエーフとデートするなんて、駄目だ。
多分だけど、私は恋愛としてリエーフに気持ちが傾きだしている。
それなら、ちゃんとケジメをつけて、一から…恋愛から始めたい。
「ちょっとだけ、待って。」
取り出したスマホ。
画面に指を滑らせて、秋紀とメッセージをやり取りしていた画面へ。
【ごめんなさい】
この一言を震える指先で打ち込んで、送信した。