第5章 ※三角形 case3※
秋紀の調子が戻ってくると、次の展開は読めてくる。
仲直りエッチしよーぜ、とか言い出すに決まっている。
「さくら。」
ほら、少しずつ近寄ってきた。
腕を広げて、もう抱き締めてくる体勢だ。
拒否権は相変わらず与えて貰えないんだろうな、なんて、諦めながら抱擁を受け入れる。
だけど。
ただ抱き締め続けるだけで、胸に触ったりとか、脱がせようとかしてこない。
不思議に思って、顔に視線を向けた。
「…なんだよ?」
「仲直りエッチとか、今日は言わないの?」
「俺、怒ってねーから、ケンカした覚えねぇし?」
秋紀の方は、そのつもりじゃ無かったらしい。
少し、残念に感じるのは、私が期待していたから。
ちょっとだけ、だけど。
だから、喧嘩のネタを作ってやろうと思って。
「…そういえば、秋紀。」
「何?」
「今朝、随分と早くから家に来てたけど、なんで?」
「…あ、いや、それは…。」
多分、私が浮気に気付くように、わざとやっただろう事を口に出す。
「普段は絶対に昼過ぎだよね、来るの。しかも、スーツ着てきたんだね?うちに着替えあるからって、朝帰り?」
「…ゴメンナサイ。」
部屋の隅に掛けられていたスーツを視線で示すと、観念したように頭を下げてきた。