第5章 ※三角形 case3※
泣き続ける事、数分。
だんだんと羞恥心というものが芽生えてきて、無理矢理にでも涙を止めようと目元を擦る。
その手を、止めるように掴む手。
「擦ると腫れるだろーが。」
こんな時でも、私の事を心配してくれている。
「腫れても、秋紀ほどの大惨事にはならないから平気ですー。」
嬉しいのに、さっきより近付いてしまったから、より恥ずかしくなって、可愛くない事を言って返した。
「おまっ!心配してやってんのに!」
「本当の事言われると、人間って怒るよね。」
「悪かったな!気にしてんだよ!目ぇ小さいの!」
「別に目の事なんか言ってないけど?」
手が払われて、言い合いに発展する。
それで、お互いの涙は止まった。
「ホンット、可愛くねぇ…。なんか、急激に安心してきた…。」
「何が?」
「そのままだと、浮気相手には捨てられるぞー。」
「捨てられませーん。秋紀と別れたら責任取ってくれるって言ってたし?」
再会する可能性は限りなく低いと思うけど。
リエーフの、この言葉だけは信じておいてあげたい。
わざわざ声に出したのは、まるで私は浮気を続けていいと言われたみたいで、腹が立ったからだ。
「じゃ、尚更安心だ。別れねぇから、ソイツが責任取る日は来ねぇよ。」
また泣かれる覚悟をしていたのに、予想とは逆で。
秋紀は、自信あり気に笑っていた。