第5章 ※三角形 case3※
家に入ると、リビングで向き合って座る。
真剣な話をする事を表すように、2人とも正座だ。
間を空けると、言うタイミングを逃しそうで。
「秋紀が気付いてるの分かってるけど、言うね。
他の男と寝ました。ごめんなさい。」
一気に言葉を吐き出して、頭を下げた。
正座をしていたから、土下座のような格好になっている。
「…おぅ。それは、分かってる。でも、俺はさくらを責められる立場じゃねぇだろ?
だから、頭下げないでいーよ。」
頭に重みを感じて、それが左右に移動する。
撫でられているのが分かって、顔を上げた。
秋紀と、目が合う。
「…ソイツに、本気になったりしてねぇよな?」
秋紀の顔は、許しを体現するように笑ってはいるけど、眉間に微かに皺が寄っていた。
確認する声が震えている。
「うん。多分…。」
「多分じゃねぇよ。絶対って言え。頼むから。」
強い声に、願いが込められていた。
いくら願われても、それは出来ない。
私はリエーフの眼を見たら、また囚われてしまうだろうから。
まぁ、再び会う事なんて、無いとは思うけど。
無言が、回答。
2人とも喋れないまま、静かに時間だけが過ぎていった。