第5章 ※三角形 case3※
何か言わないといけない。
分かっていても声にならない唸るような音ばかり出ていた。
「今、無理に答えようとしなくていいって。泣かせるような事ばっかして、ごめんなー。」
髪に移動して、ワシャワシャと荒らす手が心地好くて、少しずつ落ち着いてくる。
「…ごめん。」
「いーよ。考えてくれる余地があるって分かっただけでも嬉しいし。」
言葉として、やっと発する事が出来たのは、謝罪だったけど。
断ろうとした意図じゃないのは、理解してくれて良かった。
それからも、私が完璧に落ち着くまで撫で続けてくれる。
涙が止まってしまうと、落ち着きすぎて眠くなってきた。
瞼が閉じそうなのに気付かれて、顔を覗かれる。
キスでもしてきそうなくらい近くて、驚きで反射的に体を引く。
テーブルの反対側に居た秋紀は、私に支えられていた部分もあって。
ゴッと派手な音を立ててテーブルに頭から落ちる。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫なワケあるか!鼻打ったわ!」
心配になって、今度はこちらから顔を覗こうとすると、勢いよく起き上がった。
赤くなった鼻を押さえている姿に、笑いが込み上げてくる。
「あー!もうっ!笑うな!」
「笑って、なっ…ふふっ!」
怒っている顔が逆に面白く見えきて、吹き出してしまった。