第5章 ※三角形 case3※
わざとらしく口を挟んだ事で、聞きたくないのを察したらしい。
秋紀の瞳が、迷うように揺れている。
溜め息が聞こえて、箱をテーブルに置いていた。
「最近は、さ。婚約指輪も、サプライズじゃなくて、選びたいって女が多いんだと。
だから、プロポーズ専用のが、あるんだよ。コレは、そういうやつ、な。」
それは、言うのを諦めた訳じゃなくて、覚悟を決めただけ。
話の逸らし方が、駄目なやつだった。
そりゃ、指輪に関連した話だったら、こうなるよ。
なんで、もっと違う話にしなかったんだ、私。
完全に混乱して、嫌な汗が出てくる。
ここまで来たら、もう逃げられない。
「俺等も長いし。そろそろ、さ。結婚しねぇか?」
そして、ついに。
決定的な言葉が耳に入ってきた。
テーブル上から、秋紀の手に戻った箱が開かれて、目の前に差し出される。
心から望んでいた筈の光景なのに喜べない。
人からの意見で、こんなに迷って、決めきれない自分が、優柔不断な人間だと思えて。
秋紀に、申し訳なくて涙が出てきた。
「嬉し涙ー…な、ワケねぇよな。
今まで、待たせて悪かった。傷付け続けて、悪かった。
ソッコーお断りじゃなくて、少しでも考えてくれんなら、俺は待つから。」
テーブルから身を乗り出して、私の手を掴む。
その手の上に、箱が乗せられた。