第5章 ※三角形 case3※
夜だし、折角だからお酒も頼んで、食事が始まる。
酔っ払ってくると、気掛かりがあった事なんか、忘れてしまうくらい楽しい一時を過ごした。
「お腹いっぱい。ご馳走さま。」
「俺も腹いっぱい。ゴチソーサン。」
限界だと言うようにお腹を押さえて、食事の終了の合図となる言葉を発する。
対面にいる秋紀も、満足そうに目を細めた。
それを最後に、何故か無言。
帰る準備をしようとするでも無く、私をじっと見ている。
意味が分からなくて、首を傾げた。
「…あの、さ。お前の話は、帰ったら聞く。
だから、帰る前に俺の話、聞いてくんね?」
やっと喋ったと思ったら、頭の隅に追いやっていた嫌な事を思い出させられて、思考がフリーズする。
どう反応すれば良いか分からなくて、瞬きを繰り返していた。
「俺、さ。もう、浮気とかしねぇから…。」
そんな状態でも、秋紀の話は始まって。
ジャケットのポケットから、小さな箱が取り出される。
アクセサリーのケースだというのは形で分かった。
「あ、あれ?今日選んだ指輪って、サイズ直しに出したんじゃ無かった?」
繋がれる言葉が予想出来たから、少しでも話を逸らそうとする。
秋紀と、結婚したいのか。
ただ、結婚したいだけなのか。
私はまだ、答えが出せていなかった。