第5章 ※三角形 case3※
待つ事、15分程。
支払いをしているだけにしては、遅すぎる。
ガラスの戸から店の中を覗くと、秋紀とさっきの店員さんが談笑していた。
見えている光景の中、秋紀が何かを受け取ってポケットに入れている。
ショップの袋とかに入っていないから、品物じゃないと思う。
それなら、連絡先とか?
彼女連れで来た男に、そんなもの渡すなんて、頭おかしいんじゃない?
怒りの矛先を店員さんの方に向けて、秋紀を怒る事態を意識的に避けた。
だって、私には怒る資格が無い。
回数なんか関係無く、浮気をした事実がある。
浮上していた気持ちが、一気に沈んでいくのが分かった。
やっと出てきた秋紀は、悪いとは思ってなさそうな笑みを浮かべている。
「さて。どうせ、外出たんだし?これからランチして、街ブラデートでもするか。」
しかも、謝りすらせず、今日の予定をまた勝手に決めた。
私としても、今帰らないのは都合が良い。
帰ったら、話を聞くと言われていたから。
折角、見て見ぬフリをしてくれたのに、浮気の事を話す勇気は無いし。
方向転換しただけの怒りは、消化出来ていない。
自分から白状して謝るつもりだったのが、さっきのナンパらしい店員さんとのやり取りを持ち出して。
話の内容をすり替えて、秋紀の方がもっと悪いと言ってしまいそうだ。
だから、頷きで了解して、外でのデートを開始した。