第5章 ※三角形 case3※
そんな理由であれば、この指輪はファッションリング程度の物だ。
石の価値がイマイチ分からないから、見た目で判別つかないけど。
なんとなく、ダイヤモンドのエンゲージリングに見えなくもないけど。
きっと、そうだ。
もし断ったら、また浮気したいからと言っているようなものでもあるし、軽い気持ちで一番安いのでも選べば良い。
気を取り直して、トレイに乗っている指輪に目を向けた。
「…秋紀、因みに聞くけど予算は?」
「ヒミツ。」
「これ、値札付いてないから、適当に選んだら予算オーバーじゃない?先に値段聞いた方が…。」
「先に予算話して、その範囲内で出して貰ってるが?」
私が安いものから選ぶのを見越していたみたいだ。
こうなると、何を基準に選べば良いのか分からない。
いくら眺めても、値段が分かる訳もなく。
どれを選んでも予算内だと言っていたから、デザインが気に入った物にしたけど。
それはサイズが合わなくて、お直ししなきゃならないから、今日は持ち帰れない。
そこは、ちょっと残念だった。
支払いの段階になると、どうしても値段を知られたくないらしい秋紀に追い出される。
男のプライドがあるんだろうと思って、素直に外で待っていた。