第5章 ※三角形 case3※
でも、買い物で向かった先はドラッグストアなんかじゃなく…。
高級なアクセサリーブランドのショップ。
さっきの、虫除けって絶対に適当に言ったな。
流石に、桁が違うものは買ってやりたくない。
私だって、こんな高額な物はねだった事ないのに。
一緒に見る気すら起こらず、ショーケースから離れていた。
秋紀が、店員さんと何かを話している。
その店員さんが店の奥に引っ込んだと思ったら、秋紀はこっちを向いて手招きしてきて。
嫌々を象徴するように、盛大な溜め息をしながら近付いた。
「…何?」
「何じゃねぇよ。さくらに着ける虫除けなんだから、自分で選べ。」
「…は?何言ってんの?」
意味の分からない事を言われて、眉間に皺が寄る。
私の不機嫌を悟ったのは、戻ってきた店員さんの方で。
「お客様、こちらを…。」
こっちの会話を止めるように声で割り込み、トレイを差し出してきた。
その上には、いくつかの指輪が乗っている。
すぐには状況を理解出来ず、秋紀とトレイの方を交互に見た。
「胸ンとこ、虫刺され酷かったからな。虫除け。」
秋紀の唇が弧を描く。
キスマークを虫刺されと称して、私に虫除け名目で指輪を与えて。
自分のもの主張して、もう2度と浮気出来ないようにする防止策のつもりなのだと分かった。