第5章 ※三角形 case3※
取り敢えず、寝室に入ったけど、眠れる訳がない。
気付いた筈なのに、何も言わなかったのは、何故だろうか。
自分も、今までやってきた事だから、怒る資格がないと思ったのか。
自分が、浮気を責められるのが嫌だったから、人にはその嫌な事をしないだけなのか。
それとも、
私が浮気していれば、これからは浮気しやすくなるから、泳がせたんだろうか。
考えている内に時間は過ぎ、寝室の扉が開いた。
「アレ。お前、起きてたの?」
入ってきた秋紀は、何も読めないヘラヘラとした笑いを浮かべている。
「…秋紀、あの…。あの、さ。話が…。」
「それより、買い物が先な?話は帰ってきてから、いくらでも聞くぞ。」
いっそ、自分から白状して、謝ってしまえば楽になれると思ったけど。
秋紀は、それを許してはくれず、私の手を取って立たせた。
かなり近くに顔があるのに、目を見てはくれない。
すぐに離れた手は、震えていた気すらした。
やっぱり、私の浮気に気付いている。
そんな状態で、何を買いに行くつもりなんだろうか。
「秋紀、何か欲しいものでもあるの?」
私が毎回やるように、お金での解決をしようとしてると思ったのに。
「ん?虫除け。」
答えは、まさかのこれで。
それくらい近所のドラッグストアで買ってこい、と突っ込みたくなってしまった。