第5章 ※三角形 case3※
頭が上手く働かない。
今まで、散々浮気されてきた訳だけど、実際に現場を押さえた事は無くて。
怒っていても、どこか現実感は無かった。
「…もしかしたら酔った子を介抱してるだけかも。秋紀、意外に優しいから放っておけなかったとか…で、女の子の家がたまたまあっち方向とか…。」
信じきれない頭が、なんとか導き出した納得出来る逃げ道を言葉にする。
「本気で、そう思ってんなら、つけましょう!」
でも、リエーフさんは逃がしてくれなくて。
強引に手を握られ、秋紀達と同じ方向に歩き出した。
その所為で、私は現実を受け止めなきゃいけなくなってしまう。
女の子は、酔っ払っているかも知れないけど、しっかり自分で歩いていたし。
秋紀も、躊躇する事も無く、ホテルに入っていった。
勿論、それは大人の関係を結ぶ為の、そういうホテルで。
この現場を見ていて、何も無いとは、到底思えない。
「…リエーフさん。」
「リエーフでいいですよ。代わりに、小熊さんの下の名前教えて下さい!」
「さくら、だよ。それより、リエーフ。
…本当に、浮気相手になってくれるの?」
浮気は浮気。
秋紀が、そう言うなら、私だって浮気してやる。
同レベルになりたくなんか無かった筈なのに、秋紀の事を少しでも傷付けてやりたくて。
握られていた手を、握り返した。