第5章 ※三角形 case3※
浮気するしないの話を、ずっと聞かされている夜久さんは眉を寄せている。
そりゃそうだ。
普通なら自分の後輩が、そんな恋愛するのを許せる筈がない。
「なぁ、聞いていいか?」
怒られるのを覚悟していたけど、聞こえてきたのは冷静な声。
「お前は、‘木葉と’結婚したいのか?」
秋紀の名字を強調されて、言葉に詰まった。
普通の人生を送りたい。
結婚して、子どもを産んで、育てたい。
幸せな家庭を築きたい。
その相手を、秋紀に限定したのは、他の男には愛されないと思い込んでいる私自身。
答えが見付からず、無言。
雰囲気も暗くなってしまったから、本日はお開きになった。
「あ、送りますよ!」
「秋紀に見られたら嫌だから止めて。2人が見掛けたって事は、近くに居るかも知れないし。」
「大丈夫ですよ!そんな簡単に会いませんって。」
断るように手を振っても、リエーフさんが折れてくれる事は無く…。
「さっき、答えなかったのは、相手が木葉じゃなくても良いって事じゃねぇのか?
リエーフはバカだけど、真っ直ぐなヤツだから、木葉よりは幸せになれると思うぞ。」
夜久さんにまで、追い討ちを掛けられて。
自分の気持ちと向き合いきれていない私は、考える事を放棄して、流されてしまう事を選んだ。