第5章 ※三角形 case3※
…その筈だったのに。
「じゃ、普通に飲みましょう!折角会ったんだから、それくらい、いいっすよね?」
リエーフさんは、空気を読んでくれず。
私も、仕事絡みだから邪険には扱えず。
諦めて乾杯する事になった。
私は、上司に同行する半分は仕事のつもりの飲み会だったけど。
向こうは、最初から女を紹介して貰う気軽な気持ちの飲みだったようで。
仕事の話なんかは欠片も出ない。
その上、さっき店先で話した内容から、共通の話題だってある。
早々に、梟谷出身である事をバラし、その応援で試合を観たと言えば、話は弾んだ。
いい感じに酔っ払い始めて、その中で彼氏の情報もペラペラと喋ってしまう。
どうやら、合宿とかで2人とも秋紀と面識はあったようで。
「…アイツ、止めといた方がいいぞ?」
「そーっすよ!さっき、たまたま会いましたけど、女の子と手ぇ繋いでたんですから!」
「リエーフ!余計な事は言うんじゃねぇ!」
聞きたくもない事を聞かされた。
でも、秋紀の浮気癖は今に始まったものじゃない。
どうせ、また浮気するんじゃないかって疑ってはいた。
「秋紀が浮気性なのは知ってるけど。私は人並みに結婚したいし、子どもも産みたい。
だから、別れられないんだよ。許すしかないの。私には秋紀しか居ないから。」
いつも、心の奥底で諦める為に呪文のように唱える言葉。
口に出してしまうと苦しくて、酔っ払ってるのも手伝って涙が溢れた。