第4章 ‐case2‐endnig.
だけど、まだ足踏みしてしまう。
だって、龍くんにフラれてから、1ヶ月しか経ってない。
「楽しかったんなら、またデートしましょう!俺、次はデートとして満点取りますから!」
踏み出せず、言葉も出せず、固まっていた私の前で高らかに宣言する夕くん。
ドクンッと、胸が高鳴って、何かが一気に持っていかれるような感覚。
夕くんの笑顔が、とても眩しい。
この瞬間に、私は新しい恋に落ちた事を悟った。
今の、根拠のない自信とか。
初デートだというのに、自分の好きな事をやっていて、お喋りとか全然出来なかった所とか。
普通なら、負の要素にしかならない部分も、この笑顔だけで許せてしまうし、愛しいとすら思える。
愛及屋烏。
こういう時に使う言葉、なのかな。
ダサいと思っていたTシャツまで愛しくなってきて、チラりと文字を眺めた。
「どうしたんすか?」
「…夕くん、それの意味って知ってる?」
Tシャツの文字を指差す。
否定するように首を振って返された。
「あいきゅうおくう。愛する人に関わる全ての物が愛しい。」
「そーなんすか?じゃ、俺にピッタリっすね!愛するさくらさんの全てが愛しいです!」
意味を教えると、これまた真っ直ぐに告白されて。
「…私も、だよ。夕くんの全部が、愛しい。」
応えるように、言葉を返す。
夕くんは、少しの間固まって、急激に顔を真っ赤にした。