第4章 ‐case2‐endnig.
待ち合わせは駅前。
時間前行動をすべきなんだろうけど、私は1人で居るとナンパされるから寧ろ遅れるくらいで行け、と冴子ちゃんからアドバイスされている。
そんな訳で、時間ギリギリに駅前へ。
そこに、すでに来ていた夕くんは…。
まだ肌寒い季節だと言うのにTシャツ姿。
しかも、前にデカデカと四字熟語が書いてあった。
愛及屋烏。
あいきゅうおくう、と読む。
本人が、読めているかは不明だけど。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、の反対のような意味で、愛する人に関わるもの全てが愛しい、といった熟語だ。
意味を知って、わざと着ているなら、それ自体が告白である。
でも、その格好の夕くんと並んで歩くのは恥ずかしい。
まず、服を買ってあげたいと本気で思っていた。
「さくらっさーんっ!」
近付くのすら躊躇っていたけど、夕くんにあっさり気付かれ、大きく手を振られている。
ここまで来ておいて他人のフリは出来ずに近付いた。
「こんにちは、夕くん。個性的なシャツね。」
暗にダサいと伝えたつもりだったけど…。
「アザっす!これには、愛と、烏っつー字が入ってるんで!さくらさんとデートする日は、これ着るって決めてました!」
夕くんには伝わっていないどころか、誉め言葉として取られたみたいで、逆に喜ばれてしまった。