第1章 三角形 case1
いつの間にか寝ていたみたいで、目覚まし時計の音で目を覚ます。
昨日まで合宿だったのに今日から普通に学校だ。
休みたい。
こんなサボり体質なら、やっぱりマネージャーなんか向いてなかったんだ。
ベッドから下り、着替えを始める。
制服を着て、枕元に置いてある携帯を手に取った。
メールが入っている事を示すランプが光っている。
携帯を開いてメール画面にすると、未読が2件。
片方は京ちゃんで、怪我を心配する言葉と、迎えに来るまで待っているように、と。
もう片方は名前が表示されていない。
でも、内容ですぐに分かった。
【ケイちゃんとお幸せに】
黒尾さんだ。
私達をくっつけようとしていたから、こんな言葉を送って来ている。
【付き合ってません】
アドレスを登録し直す事もせず、それだけを返した。
リビングに出て朝食を済ませる。
誰もいないのが当たり前になっている家で、時間を見ながら京ちゃんを待っていた。
父は単身赴任で年に数回しか顔を合わせないし、母も夜勤が多い職業で、私が起きて生活している時間は寝ているから会話をしない週すらある。
お金には困った事がないし、お金で手に入る欲しい物はなんでも与えられてきた。
でも、本当に欲しい団欒の時間とか、愛情とかは絶対にくれない。
愛ってお金で買うものですか。
なんでも与えれば子どもを愛してる事になりますか。
ただでさえ、怪我をして不安な時にこのリビングの静けさは辛く感じた。
京ちゃんに兄を求めて、家族のようでありたいと願うのは、多分こんな家庭で育ったからだ。
家族の代替品にしているようで悪いけど、私には大切にしてくれる存在が必要だった。