第1章 三角形 case1
もう、黒尾さんは家に着いただろうか。
メールしたら迷惑だろうか。
怪我を見られているし、状態を報告するぐらい良いんじゃないか。
ジャージも返さなきゃならないし、それの事も合わせて、少しなら。
夜、病院から帰ると色々な事を考えながらメールの画面を開いたり閉じたりを繰り返す。
たった2日の間に迷惑ばかり掛けたマネージャーの紛い物なんかに連絡貰っても困るかもしれない。
黒尾さんだけじゃない。
梟谷の人たちにもいっぱい迷惑掛けた。
まだ入部して数週間のマネージャー。
それを言い訳にして仕事すら最後まで出来ていない。
マネージャーは辞めてジャージは京ちゃんに頼んで返して貰おう。
無かった事にするんだ。
たった2日間の出来事だから忘れるんだ。
京ちゃん以外に私を少しでも構ってくれた人がいる事を忘れなきゃ駄目なんだ。
あの人は甘える対象にしちゃいけない。
簡単に連絡取る間柄じゃないし、傍にいられない。
寄り掛かってはいけない対象なんだ。
少し時間を掛けて悩んで、携帯を操作した。
電話帳から削除しますか?
はい
これだけの操作であっさりと、黒尾さんとの繋がりは途切れた。
つい数時間前に登録したばかりの連絡先。
これで、私から黒尾さんに連絡する事は出来なくなった。