第3章 三角形 case2
真っ直ぐな子だから、この一瞬で私を嫌いになるかも知れない。
反応が怖くて、夕くんから目を逸らした。
「それ、知ってます。」
はっきりとした声が聞こえる。
軽蔑した感じなんか全くなくて、夕くんに視線を戻すと、真っ直ぐ私を見ていた。
「昨日、龍と話して聞きました。
でも、キープだからなんなんすか?考えるってのは、可能性があるって事だ。
0じゃねぇなら、俺が諦める必要なんかねぇ!」
強い意思を感じる宣言。
夕くんが、とても格好良く見える。
「…有難う。」
男をキープ扱いする。
端から見たら、普通に悪女だ。
そんな私を許してくれた気がして、素直に言葉が出てくる。
「礼なんか、必要ないっすよ!俺がさくらさんを好きなように、さくらさんが龍を好きなだけじゃないっすか!
龍がさくらさんに惚れるより前に、さくらさんが俺に惚れてくれりゃ良い話っすよ!」
好きの矢印が一方通行だらけの現状。
言葉にすれば単純で。
だけど、納得するのは難しい事だと思うのに。
それを簡単な事のように飲み込めるのは、夕くんだからこそ。
龍くん達が口を揃えて、夕くんはイイ男、だと。
そう言う理由が、分かった気がした。