第3章 三角形 case2
飛び付くように、私の手前で夕くんが跳ねる。
近付いた体を咄嗟に避ける事は出来なくて受け止めた。
いつもは五月蝿いくらいの夕くんが静かで、不安になって顔を覗くと…。
「…今、死んでも悔いはねぇ…。」
満ち足りた顔をして、物騒な事を言っていた。
「コラ!夕!さくらにセクハラすんな!私の義妹になるんだから、手ぇ出したら承知しないよ!」
冴子ちゃんが、私から夕くんを引き剥がし、サラッと知られてはいけない事を暴露する。
「なぬっ!もしや…龍と、お付き合いされてるんで?」
「してないっ!」
当たり前のように勘違いされて、即座に否定を返した。
「そーっすよね!さくらさんは、俺の事を考えると言って下さった!返事をする前に、龍と何かあるようなお人じゃない!」
かなりのポジティブ精神で納得してくれる夕くん。
でも、申し訳ない事に、不誠実な事実があるのだ。
「ごめんね、夕くん。その…返事、する前に…龍くんに告白してるの。」
言わなきゃ、バレない。
だけど、真っ向から私にぶつかってくれる夕くんをキープ扱いしている酷い女なんだ、私は。
ちゃんと、今ある現実を夕くんに知って貰おうと、話をした。