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【HQ】サンカク。

第3章 三角形 case2


この流れのままでは、東京に行かなきゃならなくなる。
そんな費用なんか出せないし、今から宿泊先を探すのなんて無理。
断ろうとしたけれど、冴子ちゃんは最初から私を連れていく気満々だったみたいで。

太鼓仲間と一緒に行く車に同乗、その人達の女子グループが泊まる場所に宿泊…と。
全て、人数の中に私を含んで計算していたらしい。

仕事を理由に出来ないのは、フリーターの辛い所。
すでに確定しているシフトで、休みが決定している期間だったのが痛い。

色々と先回りされていたのもあって、受け入れる事しか出来なくなった。

諦め半分に、東京観光について話している内に時間が過ぎて、時刻は夕方。
私と冴子ちゃんのスマホが、ほぼ同時に音を立てた。

私の方には夕くんから、冴子ちゃんには龍くんから。
部活終了のお知らせだった。

学校の近くまで2人を迎えに行くと、坂の上から降りてくる何人かの人影。
その中の一人が、突然駆け出して近付いてくる。

「さくらさーんっ!」

響いてくる夕くんの声で、やっとこっちが認識するくらいの距離があったのに。
私に気付いてくれた事が嬉しい。

この子の中では、きっと私が一番なんだ。
潔子さんより、私を見てくれるんだ。

叶わない不毛な恋をするより、自分を好きと言ってくれる子の方が良いんじゃないかって。
少しだけ、思ってしまった。
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