第3章 三角形 case2
練習の終わりを待つ間、出てくるのは溜め息ばかり。
ご褒美って何をすれば良いのか、全くもって分からないし。
そもそも、龍くんの方は私からじゃなくて潔子さんからのご褒美が欲しい筈だ。
考え始めると、思考はどんどん暗い方へと進んでいく。
「さくら、悪かったって。勝手な事言ってさ。別に、そんな悩まなくても、アイツ等は褒めとくだけで十分ご褒美だよ。」
私の悩みはご褒美の事だけだと、思い込んでる冴子ちゃん。
龍くんに好きな人がいる事は、知らないようだった。
人の口から、姉に好きな人をバラされる。
多分、龍くんじゃなくても怒らせる事である。
だから、他に悩みがあるなんて口に出来る筈もなく、ただ溜め息が増えていった。
「そんな溜め息ばっか吐いてると、幸せが逃げるよ。ヨシッ!じゃ、気晴らしに他の事考えようか!」
話を切り替えるように、冴子ちゃんが手をパンッと合わせる。
「さくらはさ、東京行ったら、どっか観光したいトコとかある?」
「…は?」
「ほら、春高だよ!アイツ等の応援ついでに、ちょっとくらい遊んだっていいじゃん?」
そして、始まった話の内容は、驚く事に私も東京に行く話になっていた。