第3章 三角形 case2
‐田中side‐
ノヤっさんに話すべきか、話さざるべきか。
練習中は、何も考えられなかったが。
最初っから、そんなモン考える必要なんかねぇよな!
ノヤっさんは、こんな事で何か言うようなちっせぇ漢じゃねぇんだ!
「さくらさんはっ!俺の事が好きなんだ!」
勢いよく、顔を上げながら言葉を吐き出す。
周りが、シンとしたのが分かった。
信じちゃいねぇのか、ヒソヒソと話してるのが聞こえてくる。
「そーか!さくらさんは、龍の魅力が分かるお人なんだな!」
そんな中で、一人だけ嬉しそうな顔をしてくれたのはノヤっさん。
「だが、俺は負けねぇ!さくらさんは、俺の女になる人だ!」
意気込みを示すように、両手を握り締めて掲げている。
「龍!お前は今から俺のライバルだ!絶対にお前に勝って、さくらさんを俺のものにしてやる!」
ビシッと、俺を指す人差し指。
ホンット、ノヤっさんはイイ男だぜ!
「おぅ!いくらでも、かかって来いってんだ!」
売られた喧嘩は買うモンだ。
当たり前のように言い返して…。
あれ?
なんで俺、この喧嘩買っちまった?
俺は、潔子さん一筋だと心に決めた筈だろ?
後から、買った喧嘩の意味に気付いた。