第3章 三角形 case2
龍くんの目が、じっと私を見ている。
やっぱり怒られるのは怖くて、反射的に身を竦めた。
だけど、怒鳴られたりする訳じゃなく。
「それ、いいな!さくらさん、やっぱ天才っすね!」
寧ろ、喜ばれている事が判明。
頭、大丈夫かな、この子…。
でもまぁ、好きな気持ちを龍くんに向けながら、夕くんの事を考える。
これ、さっき言われた理想を叶えているんだよね。
喜ぶのも、無理は無いのかな…。
こう考えたら、龍くんの反応が納得出来た。
それなら、好きアピールを今から開始しても大丈夫かな。
「…じゃあ、今度は龍くんの応援しに練習見に来てもいいかな?」
凄く迷って、やっと出た第一歩。
龍くん目当てを含ませるくらいしか、アピール方法が分からない。
好きという、たった2文字。
言うのは簡単だろうけど、何回も言ったら嘘っぽくもなるから、大事な時にしか使いたくなかった。
ただ、遠回し気味だった言葉では、上手く伝わらなかったらしく…。
「おぅ!気軽に見学来て下さい!ノヤっさんの勇姿見たら惚れますよ!」
また、夕くんアピールをされてしまう。
これがマンガだったら、盛大にズッコケてしまいそうな場面だった。
「…あ、あぁ、うん。…夕くんの事も、ちゃんと見るね。」
でも、現実でそんな事をするのは、お笑いくらいだと思うから出来る訳がない。
苦い笑いに、途切れがちな声を乗せて返した。