第3章 三角形 case2
校門から出た頃、追い掛けてくる足音が聞こえる。
振り返ってみると、龍くんが息を切らして私の前で止まった。
「あ、のっ!さっきのは…ノヤっさんだけじゃなくて、皆のアコガレってやつで、だな!」
途切れ途切れに吐き出される言葉は、夕くんのフォローで。
「だから、ノヤっさんの勇姿、見ていってやってくれ…ねーですか!」
途中でタメ口をきいていた事に気付いたみたいで、無理矢理な敬語を付け足される。
年上に対して意外に真面目な所も、可愛く思えるけど。
真剣に私を見つめてる顔は、若干睨まれている気がする。
でも、そんなのが気にならなくなるくらい、龍くんの情の深さに感動していて。
恋の病の、重症さに気付いた。
「…ごめんね。」
黙っているのは苦しいけど、告白が出来る訳もない。
やっと出たのは、これだけだ。
本来なら、ちゃんとお断りする意味でも、夕くんに伝えなきゃならない言葉。
「や、そのっ!謝る必要は、ないんで!…つーか、そんな咄嗟に謝る程、俺って怖い顔してんすか?」
慌てたように、私から視線を外した龍くん。
何やら誤解をさせてしまったみたいだった。
違う、と示したくて首を横に振る。
安堵したように息を吐いて笑う顔に、胸の奥が締め付けられた。