第3章 三角形 case2
テレビの中の世界を、ただ外側から眺めている。
それに近い感じだった。
「さくらさーんっ!」
それなのに、その空間を繋ぐように聞こえた大きな声。
画面の向こうに見えていた場所が、急激に現実になる。
夕くんが、大袈裟なくらい手を振っていた。
反応を返すように軽く手を振ると、こちらに向かって走ってくる。
だけど。
「うちの恥になるような事しないで。」
私と夕くんの間に、女性が立った。
格好からして、マネージャーさんだと思う。
同姓の私から見ても、かなりの美人。
肌も、髪も、とても若々しくて。
綺麗という言葉が、この人の為だけに存在しているようにすら見えた。
「潔子さん、ヤキモチですかっ!?心配しないで下さいっ!貴女への愛を忘れた訳ではありませんからっ!」
夕くんの口から、衝撃的な発言が飛び出す。
昨日、告白したばかりの相手の前で、よくそんな事が言えるものだと思った。
もしかしたら、からかわれただけだったのかな。
信用しようとしていた気持ちを裏切られた気がする。
「…あ、えっと…。部外者が練習の邪魔してすみません。あの、私は帰りますので、どうぞ続けて下さい。」
今すぐ、この場から逃げてしまいたい。
頭を下げて、すぐに体育館から出た。