第1章 三角形 case1
京ちゃん、怒ってる。
黒尾さんが私をいじめてると思ってるんだ。
「うちのって。兄妹みたいなもの…ダロ?自分の女みたいな言い方じゃね?」
「…うちのマネージャーって意味です。」
ジャージを被っていて見えないが、言い合いを始めそうなのは分かる。
なんとかして止めないといけない。
「あのっ!私、あ…テーピング切れてたの思い出して、取りに行こうとして転んじゃって…。
役立たずだなー…なんて自己嫌悪しちゃって戻りづらくなって…。
あ、えと…だから…。私が悪い…ん、で、ごめんなさい。」
完全に本当の事は言えなくて、嘘を絡めながらなんとか今の状況を説明しようとした。
恥ずかしいけど、被っていたジャージを外す。
私が顔を出すと二人の視線は、ほぼ同時にこちらを見た。
「さくら、怪我は?」
確認するように私の事を眺める京ちゃん。
黒尾さんは私達の様子をただ見ている。
「足…多分、捻挫してる。」
怪我をしているのは嘘じゃないから、捻ってしまった方の足を見せるように出した。
京ちゃんが、地面に膝を付いて私の靴と靴下を脱がしていく。
驚く程に足首が腫れていた。