第3章 三角形 case2
龍くんが見えなくなっても、家の中に入っても、動悸が治まらない。
落ち着こうと深呼吸してみても、龍くんの怒鳴り声を思い出してしまうから無駄だった。
あんなに、怒るとは思っていなかったけど、友達を疑ったんだから当然かな。
そんな事を言ったんだから、嫌われたよね。
そう思った途端に、今度は胸が締め付けられる。
あれ、まさか、これって…。
いやいや、有り得ない。
相手は高校生だよ?
夕くんに告白された時も、それが理由で恋愛対象外にしたのに、龍くんは例外にするのはダメだ。
これは、多分、吊り橋効果ってやつだ。
怒られて怖かったドキドキを、恋心と勘違いしてる。
うん、きっとそう。
でも、友達の為に怒れるって凄い事だよね。
年上だから、一応は目上の私に、そんな事が出来るのってカッコ良いよ。
そういう部分も含めてイイコってだけで、断じて好きになっちゃった訳じゃない。
自分の中で納得しようと、脳内で会話を繰り広げる。
否定しようとすればする程、龍くんの良い部分を思い浮かべてしまって。
自分の気持ちが、龍くんに向かっている事を自覚してしまった。