第3章 三角形 case2
すぐに着いた自宅前。
送って貰って、それだけで帰すのは悪い気がして。
「お茶でもしていく?」
送り狼も何も無いだろうから、気軽に声を掛けた。
「やっ!それは、ノヤっさんに悪いんで!ダチの好きな人ん家、上がれないっす。」
当然のように断られたけど。
申し訳ない事に、そもそも私は、夕くんのその気持ちを疑っている。
「んー…。さっきの、告白って本気なのかな?告白したばかりの相手、置いて帰っちゃうんだよ?」
つい、本心が口から出た。
「ノヤっさんは、嘘で告白なんかしねぇよ!人の気持ち疑ってんじゃねぇぞ!」
すぐに聞こえた、威勢の良い声。
睨むような目まで向けられて、怖くて体が凍りつく。
「…あ、ごめん、なさい…。」
乾いた唇を動かして、途切れがちな謝罪を口にする。
それで、龍くんはハッとしたように勢いよく頭を下げた。
「偉そうにスンマセンっした!でも、ノヤっさんは本気なんで!ちょっとでも可能性あんなら、考えてやって下さい!
じゃ、俺も失礼シァスッ!今日はごちそうさまでした!」
言葉も勢いよく、早口で。
頭を上げたと思ったら、すぐに背を向けて走り去って行く。
余程怖かったのか、心臓が痛いくらいドキドキしていた。