第3章 三角形 case2
龍くんの家は反対方向だ。
それなのに、ついて来るのは、見守ってくれてるつもりなのかな。
冴子ちゃんから、色々言われてるみたいだから。
それなら、ちゃんと送って貰った方が良いかもしれない。
知り合いとはいえ、ずっと後ろを歩かれるのは怖いのもあるし…。
もう後数分で自宅という所で、この結論に達した。
「龍くん、やっぱり送って貰える?」
立ち止まって振り返る。
突然の事で驚いたのか、龍くんが固まってしまった。
「…あ、おっ!」
「青?」
「いやっ!ちがっ!俺で良ければ、喜んで!」
やっと返事があったと思えば、どこか動揺している感じがする。
隣に並ぶように手招きして、一緒に歩き始めた。
「あー…、俺が言うのもナンなんすけど。ノヤっさんはイイヤツで、漢の中の漢って感じ、で!」
道中で、何の脈絡もなく、いきなりの夕くんアピールが始まる。
そんな事を言われなくても、イイコだっていうのは、私だってよく分かっていた。
だから、その内容よりも、たまに私をチラッと見ては声が上擦るのが気になる。
私と2人きりなんて初めてだから、緊張してるのかな。
それで、話をしにくくても、夕くんのアピールするなんて、龍くんは友達思いなんだな。
2人の友情が羨ましくて、微笑ましくて、笑みが零れた。