第3章 三角形 case2
‐田中side‐
ノヤっさーんっ!
ここは、さくらさん送りますって場面だろうが!
俺と2人きりにしてどうするよ?
それともアレか?
ノヤっさんの良いとこアピールを俺にしろと?
そういう事なのか!?
潔子さんには及ばないが、かなりの美女と残されて、どうすりゃ良いか分かんねぇよ。
周りに助けを求めるようにキョロキョロ辺りを見回した。
「龍くん、何してるの?」
「やっ!あっ!何も、してねぇです!」
隣から届く柔らかい声。
美女は、その声も何もかもが特別過ぎる。
「…そう?じゃあ、私も帰るね。今日はわざわざ有難う。」
さくらさんが俺に背を向けた時、揺れた髪。
微かに漂う甘い香りに、呆けて見送りそうになってしまった。
「…あ!俺、送ります!送らせて下さい!」
慌てて追い掛けて横に並ぶ。
ノヤっさんのアピールもしなきゃなんねぇし…。
何より、さくらさんを一人で帰らせたと姉貴に知られたら…。
考えただけで身震いする。
大丈夫、と断られたが、後が怖くて、少し後ろをずっと歩き続けていた。