第3章 三角形 case2
引き延ばしは、お断りの常套句。
それが、夕くんには伝わってなくて。
「いいっすよ!俺、待ちます!ちゃんと考えて、答え出して下さいっ!」
目を爛々と輝かせて、詰め寄ってきた。
真っ直ぐ過ぎる眼から逃れたくて、一歩後ろに引く。
その分、夕くんが踏み出して来るから、上手く距離が取れなかった。
龍くん、助けて。
ちょっとコレは怖いです。
「流石だぜ!ノヤっさん!漢だな!カッコいいじゃねぇか!」
願っても無駄だったみたいで、龍くんの口からは誉め言葉が出てくる。
何が流石なんだかすら、私にはさっぱりだ。
「だろ!俺くらいになると、言葉にするだけでカッコいいんだよ!」
でも、単純な夕くんは、誉められた事に反応して龍くんの方を向いてくれた。
「真っ直ぐドストレート!やっぱ、男はそうじゃなくちゃな!」
龍くんの誉め殺しは尚も続いて、夕くんは調子に乗っていく。
「…つー訳で、今度は2人でデートしましょう!また連絡しますっ!
今日は有難うございましたっ!」
最後には、こっちが返せないくらい勢いのある声を置いて、走り去ってしまった。
告白したばかりの相手を放置して帰っちゃうって、有り得ない…。
夕くんの予想外の言動に戸惑いを隠せず、何も返せないまま見送ってしまった。