第3章 三角形 case2
突然、夕くんに手を握られる。
前と同じく、驚きはしたけど、嫌ではなかった。
「さくらさんに応援して頂けるなら、百万力!いや、千!万はいくな!」
「千万はあるけど、万万はないよ。億になるかな。」
喜びを、精一杯言葉で表現してくれたけど、間違っている。
淋しさで、作り笑いしか出来なかった筈なのに、今は自然と笑えて、手を握り返した。
途端に、夕くんの頭から湯気が出そうな程に真っ赤になる。
熱でも出たのかな。
「風邪なら、早く治さないと。大会で実力発揮出来ないよ?」
手を離して、熱を計るように額に当てる。
少し熱い気はするけど、風邪では無いっぽい。
「…さくらさんっ!」
再び、手が握られて。
「一目見た時に、あなたの美しさに惚れましたっ!俺と付き合って下さいっ!」
熱かった理由が、まさかの告白で判明した。
いや、まさかじゃないか。
彼氏の有無を聞かれた時点で、この可能性を考えた時もあったから。
でも、高校生とお付き合いを考える事は出来なかったから、頭の片隅にしか残ってなかった。
悪いけど、夕くんは恋愛対象じゃないのだ。
だからって、今すぐお断りして、大会に支障が出てしまったら…。
「…か、考えさせて。」
迷った挙げ句、ズルいお断りとして、返事を引き延ばす事にした。