第3章 三角形 case2
席に着いてからの2人は、競い合うように注文しては食べるを繰り返している。
あまりの食欲に、見ているだけで胃もたれしそうだった。
「さくらさんっ!これ、美味いっすよ!食ってみて下さいっ!」
なのに夕くんは、おそらく好意から、私の皿に肉を盛ってくる。
普通の女性はこんなに食べないでしょ、と言いたいくらいの山盛りだ。
しかも、少し食べれば、減らした分だけ肉を盛られる、かなり辛いループに突入していた。
「ノヤっさん。そんなに美味いなら、俺にもくれよ。」
また私の皿に乗せられそうになった肉の前に出される皿。
「おぅっ!龍も食え食え!」
お陰で、肉は龍くんの皿に盛られた。
助けてくれた気がするのは、きっと気の所為だ。
単に、食べたかっただけなんだろうな。
だって、この後も制限時間ギリギリまで、2人は食べ続けていたから。
それだけ入るなら、人が頼んだ分にだって手を出すのも仕方がない。
男子高校生の食欲に、ただただ驚きながら支払いを済ませて店を出た。
「「さくらさん!ゴチになりましたっ!」」
店の前で、揃った声と、しっかりとしたお辞儀。
この子達の礼儀正しい所は、本当に好きだ。
でも、残念な事に、私はテスト前に勉強を教えるだけの存在なんだ。
「いえいえ。ご褒美、これくらいしか出来なくてごめんね?
大会、頑張るんだよ。陰ながら応援してるから。」
淋しい気持ちを抑えて、笑顔を浮かべた。