第1章 三角形 case1
京ちゃんから距離を取るために手伝いを申し出たはいいけど、居場所がないように感じる。
つい、涙が出そうになって誰にも声すら掛けずに体育館から飛び出した。
目的もなく、ただ走って体育館から離れていく。
息が切れて、足が上手く動かなくなった。
やっと止まったのは、体が疲労に耐えきれずに崩れるように座りこんだ時。
足は止まったのに涙は止まらなくて、言葉にならない声をあげて泣いた。
嗚咽が収まってくると、やっぱり体育館が気になってしまって。
戻りづらいとは思っても黙って消えたままなんて良くないのは分かっている。
時間を確認する為に携帯を取り出すと着信が何回も入っていた。
名前は出ていない、番号のみの着信。
「…あぁ、黒尾さんか。」
冷静になってきた頭で思い出すと、そういえば番号は聞いたけど登録するのを忘れていた。
更にはメールも数件。
【ドコにいる?】
【ケイちゃんが心配するんじゃね?】
【逃げんなよ】
試合の合間、数分の休憩毎だろう時間差で、からかいと、真剣そうなメールが交互に入っている。
声は枯れて、電話は出来そうにない。
メールなら、と画面を開いて文章を打とうとボタンを触っているとまた着信が入った。