【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜
第4章 チョコレートをおひとつどうぞ ①(カイル目線)【R18】
どこか遠慮している様子のアリスを促してやると、いつのまにか手に持っていたオレンジ色の箱を俺の前にそっと差し出した。
「あのね、今日バレンタイン…でしょ?それでね、チョコのお菓子を作ってみたんだけど…よかったら、受け取ってもらえる…かな?」
ーーああ、そうだった。
今日はバレンタインだった。
媚薬騒動のせいで本来の姿からすっかり様変わりしてしまっていたが、バレンタインとは元々恋人達の甘ったるい日になるはずだった。
今までそんな甘いイベントにはほとんど縁のない人生を歩んできた俺は、愛する人からのチョコがこんなにも特別に映るだなんて知らなかった。
何も言わずじっとチョコを見つめる俺の様子に、何か勘違いをしたのかアリスは慌てて言葉を付け足す。
「あ、カイルがあんまり甘いもの好きじゃないのわかってるから、無理に食べて欲しい訳じゃないの。受け取ってもらえるだけで…あ、でもそれも迷惑だよね…じゃあ、これは持って帰…「待った」
俺は咄嗟にアリスの口を手で塞ぐと、ゆっくりと箱を受け取った。
「こら。勝手に勘違いすんなー。…嬉し過ぎて、すぐに反応できなかっただけだっつの」
じわじわと頰に熱が集まる感覚がする。
俺は誤魔化すようにそっと箱を開けると、中に入っていたトリュフを一粒口に含んだ。
控えめな甘さとトロリとしたリキュールのジュレが口の中で広がっていく。
「うん。美味いじゃねーか…………っ……?!」
途端に身体の奥から身を焦がすような激しい熱が込み上げてくる気がした。
(…っ、なんだ?これ…っ………?!)
ガタンッと音を立ててテーブルに手をつき粗い呼吸をしだす俺を見て、アリスは顔を真っ青にして「カイル!」と泣きそうな声で叫ぶ。
アリスは俺に近付くと頰と肩に手を当てて寄り添った。
その瞬間、触れられた所からしびれるような甘い感覚が広がる。
「くっ…」
俺は漏れそうになる甘い声を必死にかみ殺す。
(これは……まさか、媚薬?!)
自分のデスクに近付き置きっ放しにしていた小瓶を確認すると、半分以上あったはずの中味がほとんどなくなっていた。
「アリス……これに入ってた、薬……はぁっ……まさか、使った…のか……っ…?」
どんどん甘くなる吐息混じりにアリスへ問う。