【イケメン革命】お茶会をご一緒しませんか?〜短編集〜
第3章 チョコレートをおひとつどうぞ
どこからか美味しそうな匂いがする……
(お腹すいた…)
そんなことを思いながらゆっくり目を開ける。
「あれ…?私いつの間に部屋に戻ったんだっけ?」
どこか靄のかかったような頭といつも以上に重く感じる身体を起こす。
そこは私の部屋。
それに私はちゃんと自分のベッドで寝ていた。
(昨日……どうしたんだっけ…?えっと、バレンタインのお菓子を作ってて……なぜか急に身体が熱くなってきて………カイルの、部屋に…………っ!!!!)
ーーーーカイルの手を握りそのあとにしてしまった光景が頭の中で蘇った。
「きゃあああああああああ!!!!!!」
(私のばかっっっ!!なんであんなことしちゃったの?!?!)
昨日の失態をはっきりと思い出し、あまりの恥ずかしさに顔を覆って叫んでしまった。
「ど、どうされました?!アリス様!!!」
どうやら部屋の入り口近くでメイドさんが食事の準備をしてくれていたようで、私の叫び声に驚き飛んできてくれた。
「あっ……す、すみません。ちょっと寝ぼけてたみたいで…」
真っ赤な顔を気付かれないよう私は必死に誤魔化した。
「そう…ですか。まぁよくお眠りになっておられましたものね。
もうランチの時間でございますよ。
お風邪をひかれたとお聞きしましたけど、お加減はいかがでしょう?カイル様が胃にやさしいものを用意するように、とお話しされていましたのでスープをご用意させて頂きました」
メイドさんはそう言うとガラガラと食事の整ったワゴンを運んできてくれた。
(そっか…私風邪ひいたって話になってるんだ)
お腹は空いているのに確かにいつもと同じようには食べれそうになくて、それを見越して準備してくれていたカイルの気遣いが嬉しかった。
(カイルは医務室かな…?あとで行ってみよう)
昨日のことを思い出すと恥ずかしくて顔を合わせづらかったが、なんだか色々と迷惑をかけてしまった気がして謝りたかった。
どうにも昨日の記憶は断片的にしか残っておらず、なぜあんな状態になったのか多分カイルは教えてくれたはずだが覚えていなかった。
それに、昨日何とか完成させたチョコを渡したかった。
(絶対、今日中に受け取ってもらうんだから!)
私は心の中でこっそりと意気込むと、目の前のスープを一気に飲み干した。